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2024年10月21日
MD Anderson Cancer Center留学体験記 No. 4 留学のお金事情
今回は皆さんが気になるであろう留学のお金事情です。留学の採用枠(給与や保険の有無、程度)、家族構成(単身、家族同行、子供の年齢)、留学場所(家賃の相場)などで異なることをお断りした上で、一例として具体的にお話します。私の留学期間の為替の平均は1ドル=約150円です。歴史的円安とアメリカの物価高で生活は楽ではありませんが、留学に行きやすい社会背景になると競争率もあがるので、今留学を検討している人は時期を待ちすぎずに挑戦すべきだと感じます。
まずは収入です。私はMD Anderson Cancer CenterのPostdoctoral Fellowという採用枠です。額面上の給与は65,900ドル/年で、月に銀行口座に振り込まれる手取りは3,800ドルです。額面との差額(1,700ドル/月)は医療保険加入費(4人家族で700ドル/月)や税金等が天引きされています。その他に大分大学からの留学支援助成として一括で250万円、月に給与として約25万円(1年間)を頂きました。
次に支出ですが、ばらつきも大きいものの月に6,000ドル前後です。内訳は、家賃(水道代込み)の2,500ドル/月が大半を占め、固定費用として保育園1名900ドル、電気200ドル、ガソリン100ドル、諸費用(インターネット、携帯通信、ガス、車両保険、家の保険など)が300ドルです。残りの約2,000ドルの半分が生活費(食費、衣類、日用品)、半分が娯楽費・教育費(旅行、外出、習い事)です。単純計算すると、月に2,000ドル(30万円)以上がマイナスになっていることがわかります。この他にも留学初期には渡米費用(飛行機、荷物輸送)で約100万円、車購入費で約300-400万円、家具や生活必需品の購入などなにかと支出が多かったです。総合すると、初めの1年間で500-1000万円を自己資金や助成金でカバーしたと思います。
収入について思うところは、留学する適齢です。Postdoctoral FellowはNIHからの勧告によって最低給与が保証されているため、他の研究留学職より給与が少し高い傾向です(それでもアメリカ都市部では低所得層に分類されます)。周りをみても日本人医師の多くがこの採用枠で研究留学しています。Postdoctoral Fellowとしてのトレーニング期間は学位取得後5年が目安のようです。留学助成も年齢や学位取得後年数に制限があり、私は38歳(学位取得後4年半)の留学で応募できる留学助成が限られました。留学を考える上では学位取得後2-3年以内が有利かもしれません。
支出については、ヒューストンはアメリカの大都市で治安もよくはないので、治安のいい地域に住むと家賃が高いです。狭い部屋で十分とも考えましたが、州の決まりで夫婦と幼児1名ならば2ベットルーム2バスルーム以上の部屋が必要でした。またデイケアと呼ばれる私立・教会の保育園は月に最低でも数百ドルかかりますが、公立小学校は無料です。支出は家族構成によって大きく異なると言えますが、少なくとも日本にいる時よりは支出が大幅に増えますので、留学に向けた貯蓄やグラント獲得(もしくは両方)が必要です!
今回は話題に関連した写真がないのでヒューストンの風景です(独立記念日、夜景)。次回は、マウスを用いた動物実験についてお話します。