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腫瘍
臨床研究
腹腔鏡下卵巣癌・卵管癌・腹膜癌根治術に関する臨床研究
研究の目的及び意義
本邦では、早期の子宮頸癌や子宮体癌には腹腔鏡手術やロボット支援下手術などの低侵襲手術が行われているが、卵巣癌に対しては、開腹手術しか行われていないのが現状である。 一方、海外では早期の卵巣癌に対して低侵襲手術を行っている国も存在しており、近い将来、卵巣癌に対しても低侵襲手術を行うことが一般化してくることが予想される。
今回、当院で行う臨床研究は、早期卵巣癌症例(卵管癌や腹膜癌、境界悪性卵巣腫瘍も含む)、卵巣摘出後に悪性もしくは境界悪性と診断され、追加手術が必要となった症例、術前化学療法後に病変が消失または著明に縮小した症例を対象として、卵巣癌(卵管癌や腹膜癌、境界悪性卵巣腫瘍も含む)根治術を腹腔鏡下で行い、同時期に行われた開腹手術との治療成績の比較を行う。これにより卵巣癌(卵管癌や腹膜癌、境界悪性卵巣腫瘍も含む)症例に対する腹腔鏡下手術の実行可能性、安全性、予後を評価する。
この臨床研究は、下記のシェーマにあるように多施設共同試験として行う予定である。
今まで、卵巣癌の回復手術は、上図に示すように剣状突起から恥骨上にかけて大きな傷ができるが、腹腔鏡で行う場合は1~2cmの傷6か所程度で行うことができる。これに伴い、出血量の減少、術後回復や入院日数の短縮が予想され、卵巣癌患者に大きな利益がもたらされると予想される。ただし、腹腔鏡下手術を行うことで治療予後が悪化することがないか、予後的な因子も追跡を行う。
主要評価解析
医療介入を必要とする手術日から30日以内の周術期合併症(腸閉塞、感染、出血等)の発生(発症した合併症はClavien-Dindo分類に準じgradingを行う。)
副次評価項目
患者QOL
FactOV-28を用いてQOLの評価を行う
手術情報
手術時間、術中出血量、輸血率、入院日数など
マッチドコホート集団において、腹腔鏡下手術と開腹手術を受けた群間において、Kaplan-Meier推定を用いて、年次イベント率を推定し、この率の群間の違いを検出するためのログランク検定を実施する。
本臨床試験を先進医療Aで申請し、まずは多施設共同試験として前向きの比較試験として行い、症例を限定した卵巣癌・卵管癌・腹膜癌に対する腹腔鏡下手術が開腹手術に対して十分に安全に予後的にも問題なく行えることを示し、将来の保険診療とすることを大分大学より目指します。
卵巣がんの治療薬の開発
HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)
クロマチン構造において主要な構成因子であるヒストンの脱アセチル化を行う酵素である。遺伝子の転写制御において重要な役割を果たしている
化学療法抵抗性のため予後が悪いといわれている明細胞癌にはHDA6が強発現している(図1)ことを発見し、ここに着眼して新規の卵巣がん治療薬の開発に取り組んでいる
図2に示すとおり、HDAC6による抗腫瘍効果が認められ、卵巣がんの治療薬の開発に向けて研究を進めている
子宮体部類内膜癌のバイオマーカーの検索
TP53
一つ一つの細胞内でDNA修復や細胞増殖停止、アポトーシスなどの細胞増殖サイクルの抑制を制御する機能を持ち、細胞ががん化したときアポトーシスを起こさせるとされる。この遺伝子による機能が不全となるとがんが起こると考えられている、いわゆる癌抑制遺伝子の一つ。
子宮体がん患者(類内膜癌)におけるTP53の発現を各項目に分けて検討
その結果、類内膜癌G1、G2の患者間でTP53の発現量は予後と関連したという結果となった
TP53の発現と予後の関係は病期に匹敵するぐらいの予後因子となり、今後バイオマーカーとなりうるか研究を進めている